Column Vol. 14 中小企業の人材を「人財」に育てるポイント

 

「先生、うちは一体どうすれば宜しいのでしょうか?」

 

真剣な眼差しで、現状を打破したい!と切願するY社長。そこには本気の意欲に溢れているのが分かります。

 

心底から切願する想い、真剣な眼差しは全て目つきに出ます。この目つきこそが決断と実効力を伴う “いい目つき” で、必ずと言ってよい程、逆境をチャンスに変える決心がそこにあります

 

Y社長が経営する建設会社で、先日ベテランと一緒に現場で育ててきた従業員が一人立ちし、初めて任せたシゴトで施工を間違えるという大きな失敗をしてしまったとのことです。顧客から大目玉を食らい、全て持ち出しで施工をやり直さなければならなくなったとのことでした。

 

今まで「よい」と思ったことが崩れた瞬間でした。

 

Y社長、何故彼は仕上がるまで間違いに気づかなかったのでしょうか?」

 

Y社長は少し考え「はっ」とした表情をされ、大きな声で発した言葉が、

 

「気づける仕組がないです!」

 

Y社長、素晴らしい! その点について少し補足しますね。」

 

と、述べたあと、このような補足をしました。

 

“どんな仕事でも、途中経過を確認するチェックが必要です。特に作業を一度始めてしまうと、その作業に夢中になり、周りが見えなくなる傾向があります。これは車のナビにも似ていて、目的地に導く過程で必ず「通過ポイント」があり、そのポイントに差し掛かると音声案内があります。”

 

Y社長は、「その通過ポイントを確認できる仕組みが必要なのですね!私が早速作ります!」

 

と、打開策が見えた社長さんは行動が早いです。

 

「Y社長、さすがです! 注意点があるので質問させて頂きますが、将来的にどのような社員を育てていきたいですか?」

 

Y社長は「今回のような問題が起きない仕組を作り、起きたとしても社員自ら解決できるようになってもらいたいです」

 

そこでY社長に提案をさせて頂きました。

 

Y社長、であれば、今回の件を良い例題として、その失敗をしてしまった社員の方に現在抱えている問題点とその解決案を一緒に考えて作ってもらえばいいのではないでしょうか?」

 

「なるほど!そうすることで社員も今回の事例をもとに仕組がつくれ、それを周りに教えることができますね。」

 

今まで「人材」として扱っていた社員が、「人財」に変わる時、そこには「任せる」ことと「導く」指導力が社長には必要になってきます。そして、その「人財」は必ずと言っていいほど次の「人財」を育成していくのです。

 

そこには目的があり、未来への延長線が見えたY社長は目を輝かせながら重たい一言を言われました

 

「社員の成長は、私自身の人間性の成長なのですね。」

 

その言葉を聴いて、思い出した言葉が

 

「どこまでも、先ず人間をつくれ!」 それから後が経営であり、あるいはまた事業である。

 

東郷平八郎、松下幸之助、稲森和夫、などが影響を受けた中村天風の言葉です。それに気づいたY社長は成長を続けていくと確信した瞬間です。