■ 多くの社長が誤解している「目標」の本当の意味
私は経営コンサルティングの現場で、数え切れないほど多くの経営計画書を見てきました。
その中で時々こんな言葉を耳にします。
「計画なんて意味がないですよ。」
「目標通りにいったことなんてありません。」
「どうせ未来は分からないじゃないですか。」
確かに、その気持ちは分かります。
私自身も世界14カ国で50以上のプロジェクトに携わってきましたが、最初に描いた計画通りに進んだプロジェクトなどほとんどありません。
半導体工場の立ち上げでもそうでした。
大型設備の搬入スケジュールも変わる。
部品供給も遅れる。
為替も変わる。
法規制も変わる。
お客様の要求も変わる。
計画通りにいかないことの方が普通なのです。
しかし私はそこで逆に気づきました。
目標とは、当てるために存在しているのではない。
修正するために存在しているのだと。
これは経営者にとって極めて重要な視点です。
多くの人は目標を「予言」だと思っています。
しかし本当は違います。
目標とは未来予測ではなく、現在地を知るための基準なのです。
つまり、目標の価値は達成することだけではありません。
むしろ達成できなかった時にこそ、本当の価値が現れるのです。
■ 飛行機は常にコースを外れて飛んでいる
私は飛行機が好きです。
操縦の世界では有名な話があります。
飛行機は目的地まで真っ直ぐ飛んでいるように見えますが、実際には違います。
風が吹く。
気流が変わる。
気圧が変わる。
機体の状態も変わる。
そのため飛行機は常にコースから外れ続けています。
しかしパイロットは慌てません。
なぜなら計器を見ながら何度も何度も修正しているからです。
つまり飛行機は、
外れる
↓
修正する
↓
また外れる
↓
また修正する
を繰り返しながら目的地へ到達しているのです。
経営も全く同じです。
目標とは飛行計画です。
実績とは現在地です。
その差が分かるから修正できる。
もし目標がなければどうなるでしょうか。
今どこにいるのか分からない。
どれくらいズレているのかも分からない。
どこへ向かえばいいのかも分からない。
つまり経営は遭難してしまうのです。
■ 優秀な経営者は「差」を見る
私が経営診断をする時、必ず確認する数字があります。それは目標そのものではありません。目標と実績の差です。
例えば売上目標1億円。実績8,000万円。
多くの社長は落ち込みます。しかし私は別の視点で見ます。なぜ2,000万円足りなかったのか。そこに経営の真実が隠れているからです。
新規顧客が足りなかったのか。
リピート率が落ちたのか。
単価が下がったのか。
競合が強くなったのか。
採用が遅れたのか。
営業力が不足したのか。
つまり差とは問題そのものではありません。差とは会社が学ぶべき課題を教えてくれる先生なのです。
例えば学校のテストも同じです。100点を取れなかったから価値がないのではありません。間違えた問題が分かるから価値があるのです。もし全部100点なら、何を学べばいいか分かりません。
経営も同じです。
目標との差が見えるから改善できる。だから優秀な経営者ほど「差」を歓迎するのです。
■ 目標を立てない会社は成長できない
以前、ある設備会社の社長と話していた時のことです。
その会社には目標がありませんでした。理由を聞くと、「どうせ変わるし、立てても意味がないから。」という答えでした。
しかし業績を詳しく見ると、もっと大きな問題がありました。社員が誰も未来を見ていないのです。
営業は今月だけ。
現場は今日だけ。
管理部門は目の前だけ。
つまり全員がバラバラに走っていたのです。これはサッカーで言えばゴールがない試合です。野球で言えば得点板がない試合です。そんな状態で勝てるはずがありません。目標とは数字ではありません。組織の方向を揃えるための共通言語です。
だからGHOST経営™では、まず未来像を描きます。その未来像から逆算して目標を作ります。そして利益構造を設計します。さらに教育と評価制度を繋げます。つまり目標は単独では機能しません。経営OS全体の中で機能するのです。
■ ズレが教えてくれる経営の真実
私はコンサルティングの現場でよくこう言います。「問題は失敗ではない。問題は気づかないことだ。」
例えば利益率20%を目標にしていた会社が15%だったとします。これは悪いことでしょうか。
私はそうは思いません。
なぜなら、その5%の差が見えたからです。
もし目標がなければ、15%が良いのか悪いのかも分からない。改善すべきかも分からない。つまり成長できないのです。
経営とは修正の連続です。トヨタもそうです。
改善活動の本質は完璧を目指すことではありません。ズレを発見することです。Kaizenという言葉が世界で使われているのも、その思想が優れているからです。完璧な計画を作ることよりも、ズレを発見し続けること。これこそが成長する会社の共通点なのです。
■ 半導体工場で学んだ「異常」の価値
半導体工場では、ほんの小さな異常でも記録します。
温度が少し違う。
圧力が少し違う。
歩留まりが少し落ちた。
なぜそこまでやるのか。異常が未来の問題を教えてくれるからです。
異常を放置すると大事故になる。
異常を分析すると改善になる。
つまり異常そのものに価値があるのです。
目標との差も同じです。ズレは悪ではありません。ズレは未来からのメッセージです。
「このままでは危ない。」「ここを改善しなさい。」「市場が変化している。」
そう教えてくれているのです。
だから私は経営者にこう伝えます。目標を外したことを責めるな、外れた理由を学べ。その方が100倍価値があると。
■ GHOST経営™が考える目標管理
GHOST経営™では、目標を「管理のための数字」とは考えていません。目標は未来を実現するためのナビゲーションシステムです。
カーナビも同じです。
目的地を入力する。道を間違える。再検索する。また進む。
これを繰り返します。
もし目的地を設定しなければどうなるか。どこへ向かえばいいか分からなくなります。
会社も同じです。
目標があるから進める。ズレがあるから修正できる。修正できるから成長できる。
つまり目標とは達成のためだけではなく、成長のために存在しているのです。
■ 経営の本質とは「未来との対話」である
目標とは何でしょうか。
売上でしょうか。
利益でしょうか。
もちろんそれもあります。しかし本質はもっと深いところにあります。
目標とは未来との対話です。
未来の自分。
未来の会社。
未来のお客様。
未来の社員。
その未来と対話するために目標があるのです。だから目標は外れてもいい。むしろ外れた方が学びは大きい。なぜなら現実を教えてくれるからです。
人間というものは不思議です。
未来を描く。
現実と比べる。
修正する。
そしてまた前へ進む。
この繰り返しによって成長します。
会社も同じです。優秀な経営者ほど目標を信じていません。しかし目標を持っています。なぜなら目標そのものではなく、目標との差に価値があることを知っているからです。
つまり経営の本質とは、完璧な未来予測ではありません。未来を描き、現実とのズレを学び続けることです。
だから目標は、その通りに行かないから役に立たないのではない。その通りに行かないからこそ、役に立つのである。これこそが、長期繁栄する企業に共通する経営思想なのです。
