■ 優秀な経営者ほど「過去」より「未来」を見ている
経営の現場では、日々さまざまな問題が発生します。売上の減少、利益の減少、社員が辞める、クレームが発生する、納期が遅れる、資金繰りが厳しくなる…
経営者であれば誰もが経験することです。そして問題が起きると、多くの人は最初にこう考えます。
「なぜこうなったのか?」
もちろん原因を知ることは大切です。
しかし私は、世界14カ国、50以上のプロジェクトに携わり、多くの経営者を見てきた経験から断言できます。
経営の成否を分けるのは原因分析ではありません。対策立案です。
もっと言えば、「これからどうするか」に意識を向けられるかどうかです。
これは極めて重要な違いです。
なぜなら原因を考えている間にも時間は進み続けるからです。例えば車で目的地へ向かっている時、道を間違えたとします。その時に、「なぜ間違えたんだろう」「どこで判断を誤ったんだろう」と考え続けても目的地には近づきません。
必要なのは、「ここからどう修正するか」です。
過去を理解することは必要です。しかし未来を変えることはもっと重要なのです。
■ 馬車の旅が教えてくれる経営の本質
昔、長距離移動は馬車でした。数百キロを移動する旅では、予定通りに進まないことが日常茶飯事だったと言われています。雨が降ったり、道がぬかるんでいたり、馬が疲れ、荷物が壊れる、盗賊が出る…
今の経営環境と驚くほど似ています。
では、予定より半日遅れた時、優秀な御者は何を考えたのでしょうか。
「なぜ雨が降ったんだろう」でしょうか。
「なぜ馬が疲れたんだろう」でしょうか。
違います。彼らが考えたのは一つだけです。
「どうやって遅れを取り戻すか」
です。
宿泊地を変更するのか、馬を交換するのか、ルートを変えるのか、休憩を短縮するのか。つまり未来に対して意思決定をしていたのです。
経営も全く同じだと言っても過言ではありません。
売上が落ちた、利益が減った、社員が辞めた、そこで原因だけを語っても会社は前進しません。
大切なのは、
「ここから何をするか」
なのです。
■ 原因追及が会社を弱くする時がある
私はコンサルティングの現場で、ある共通した現象を何度も見てきました。業績が悪い会社ほど会議が長いまたは会議などまったくやっていないのどちらかです。
大半が犯人探しです。「営業が悪い。」「製造が悪い。」「マーケティングが悪い。」「景気が悪い。」「社員の意識が低い。」
会議室の空気は重くなり、誰も発言しなくなる。
責任の押し付け合いが始まり、外部に責任をなすりつけるが、何も決まらない。これでは会社は強くなりません。
一方で成長している会社は違います。
もちろん原因分析もします。しかし分析は短く、すぐに次の話になります。
「では、どうする?」
です。
この違いは非常に大きい。なぜなら人間の脳は、問題よりも解決策を考える時の方がエネルギーを発揮するからです。
問題ばかり見ていると視野が狭くなる。解決策を見ると未来が見える。つまり原因追及だけでは組織は前向きになれないのです。
■ 半導体工場で学んだ「対策文化」
私が半導体工場で働いていた頃、トラブルは日常的に発生していました。
設備停止、部品故障、品質異常、納期変更など、何も起きない日の方が珍しいくらいです。
しかしそこで学んだ重要な考え方があります。
それは、
「誰が悪いかではなく、どう防ぐか」
です。
例えば装置が停止した時、「なぜお前はミスしたんだ」という議論をしても設備は動きません。
しかし、
「次回どうすれば再発しないか」
を考えると改善が生まれます。
チェックリストを作る、作業手順を変える、教育を追加する、センサーを追加する。
つまり再現性のある仕組みに変えるのです。これがGHOST経営™でいう構造化です。
問題が起きた時に人を責めるのではなく、仕組みを改善する。属人性ではなく経営OSを強くする。だから強い会社になるのです。
■ 経営者が陥る「反省中毒」
真面目な経営者ほど陥る罠があります。それが反省中毒です。失敗すると考え込み夜眠れなくなる。何度も過去を振り返るなど、これらはもちろん責任感がある証拠です。しかし経営者に必要なのは後悔ではありません。決断です。
例えばスポーツでもこれと同じで、サッカーで前半に失点したとします。ハーフタイムに監督がずっと失点シーンを責め続けたらどうなるでしょう。選手の士気は下がります。
しかし優秀な監督は違います。失点は認めるが、分析もする。その後すぐに、「後半どう戦うか」へ切り替えます。
経営も同じです。
売上が未達だった、利益が計画より低かった、それは事実として受け入れる。しかし大切なのは、「来月どうするか」です。
未来を変えられるのは未来だけだからです。
■ 目標未達は失敗ではなく情報である
GHOST経営™では目標未達を失敗とは考えません。目標未達は情報です。
例えば売上目標1億円で、実績8,000万円だったとします。多くの社長は、「2,000万円足りなかった」と考えます。しかし本当に見るべきなのはそこではありません。市場はどう変化したのか? 顧客は何を求めているのか? 営業プロセスに問題はないか? 利益構造は健全か?
つまり目標との差は未来へのヒントなのです。
カーナビも同じです。
目的地から外れると、「失敗です」とは言いません。再検索(オートリブート)します。
会社も同じです。
目標未達は再検索のタイミングなのです。
■ 「なぜ」より「どうする」が組織を強くする
ある建設会社での話です。
毎月の会議は責任追及の場になっていました。営業部は現場を責める、現場は営業を責める、管理部門は両方を責める、当然ながら業績は悪化していました。
そこで私は会議のルールを一つだけ変えました。「原因の話は10分まで。残りは対策だけ。」最初は戸惑いがありました。しかし半年後には会社が変わりました。
会議が短くなった、提案が増えた、数字が改善した、利益も増えた。
なぜでしょうか?
人間は未来を見る方が力を発揮するからです。過去は変えられませんが、未来は変えられます。だから組織は未来を語る方が強くなるのです。
■ GHOST経営™が目指す「前進する組織」
GHOST経営™では、問題発見より改善設計を重視します。もちろん問題を見つけることは重要です。しかし問題発見だけでは利益は増えません。改善して初めて利益になります。
つまり、
問題発見
↓
原因分析
↓
対策設計
↓
仕組み化
↓
再現化
ここまでやって初めて経営になります。
優秀な会社は必ずこれを繰り返しています。だから長期繁栄する、だから属人化しない、だから利益が積み上がる、だから社長がいなくても回る。
これが経営OSの力なのです。
■ 経営の本質とは未来への意思決定である
経営とは何でしょうか?
原因を探すことでしょうか、反省することでしょうか。
もちろんそれも必要ですが、しかしそれは本質ではありません。
経営の本質とは意思決定です。
そして意思決定とは未来に対して行うものです。
過去は変えられません。しかし未来は変えられます。だから優秀な経営者ほど、「なぜこうなった」よりも、「ここからどうする」を考えます。
馬車が遅れたなら追いつく方法を考える。飛行機がコースを外れたなら修正する。会社が目標未達なら打ち手を考える。それだけです。
つまり経営の本質とは、過去の説明ではなく未来の創造なのです。だから目標達成に必要な考え方とは、「なぜ失敗したか」ではない。「どうしたら達成できるか」である。
その思考こそが、会社を前進させ続ける経営者の共通点なのである。
