■ 赤字会社には共通する病気がある
私はこれまで、半導体製造装置業界をはじめ、建設業、設備業、IT企業、製造業、サービス業など、数多くの企業を見てきました。規模も様々です。年商数億円の会社から数百億円規模の企業まで、経営の現場を見続けてきました。
その中で一つ確信していることがあります。
赤字には必ず原因があるということです。景気が悪かった、人手不足だから、物価が上がったから、競争が激しいから ━ もちろんそれらも影響します。
しかし、本当に強い会社は同じ環境でも利益を出しています。つまり問題は環境ではありません。経営なのです。そして赤字会社を見ていると、驚くほど共通した特徴があります。
それが、「無方針」
そして「放任」
です。
私はこれを経営における二大疾病だと思っています。
会社というものは船に似ています。目的地も決めず、航路も決めず、船員に好きなように漕がせたらどうなるでしょうか。偶然目的地へ着くことはありません。
会社も同じです。利益とは偶然の産物ではないのです。
■ 「売れるから置く」が会社を壊す
ある雑貨店の話があります。
店舗を見ていると、なぜか座卓が置いてありました。不思議に思って担当者へ聞くと、「これでも売れるんですよ」と答えました。社長に聞くと、「そんなものを仕入れろとは言っていない」という返答でした。
つまり現場が勝手に判断していたのです。
ここで重要なのは、座卓が売れたかどうかではありません。なぜ置かれたのかです。
多くの経営者は勘違いしています。売れる商品なら何を扱ってもいいと思っているのです。しかし本当に重要なのは、「我が社は何屋なのか」です。
例えば高級寿司店が突然ラーメンを売り始めたらどうでしょう。確かに売れるかもしれません。しかしお客様は混乱します。ブランドも崩れます。オペレーションも複雑になります。結果として利益が減る可能性があります。
つまり売れることと儲かることは違うのです。売上と利益は別物なのです。ここを理解できない会社は必ず苦しくなります。
■ 方針とは「捨てる基準」である
経営者が考えるべきことは何でしょうか。
多くの人は、何をやるか、だと思っています。
しかし私は違うと思っています。
「経営とは、何をやらないかを決めることです。」
実際に成長企業を見ていると、この能力が圧倒的に高い。
例えばトヨタです。世界最大級の企業ですが、全ての市場を取りに行こうとはしません。アップルもそうです。技術力はありますが、家電製品を何でも作るわけではありません。
なぜでしょうか。
集中するためです。
資源は有限だからです。人も時間もお金も有限です。だからこそ方針が必要になります。
方針とは、何を捨てるかの基準なのです。
ところが赤字会社は逆です。
来た仕事は全部やる、頼まれた仕事も断らない、利益が出なくても受ける、社員が忙しいからさらに人を増やす。
するとどうなるか。複雑になり、利益率が下がります。教育が追いつきません。品質も落ちます。やがて赤字になります。
つまり赤字は売上不足ではなく、方針不足から始まるのです。
■ 放任は自由ではない
もう一つの病気が放任です。
ここで誤解してほしくありません。放任と権限委譲は全く違います。優秀な経営者ほど権限委譲をします。しかし放任はしません。
なぜなら方針があるからです。
例えば野球チームを考えてみてください。
監督が、「自由にやってくれ」と言ったらどうなるでしょう。
一塁手が外野へ行く、「ピッチャーが打席に立つ、キャッチャーが帰宅する、試合になりません。
しかしルールと方針があれば話は別です。その範囲の中で自由に考えられる。これが本当の権限委譲です。
経営も同じです。
利益率の基準、顧客の選定基準、商品開発基準、投資判断基準…
これらを決めずに、「現場に任せる」と言うのは経営ではありません。
ただの放任です。
放任は社員を楽にするようでいて、実は苦しめます。なぜなら判断基準がないからです。
■ 社長の怠慢は組織全体へ伝染する
少し厳しいことを言います。会社の問題の多くは社長から始まります。これは社員が悪いという話ではありません。構造の話です。
例えば社長が数字を見ない。すると部長も見なくなります。部長が見なければ課長も見なくなります。やがて社員も見なくなります。
社長が整理整頓をしない。すると組織全体が乱れます。
社長が方針を示さない。すると全員が好き勝手に動きます。
つまり組織とは社長の拡大鏡なのです。
私は設備会社のコンサルティングでこんな経験があります。社長は、「社員が勝手に動いて困る」と言っていました。
しかし調べると、社長自身が毎日のように方針を変えていたのです。
昨日言ったことを今日変える、会議で決めたことを翌日変える、社員は録音し始める、メモに押印を求める。
なぜか。
信用できないからです。
これは社員の問題ではありません。経営の問題です。
方針がない。
基準がない。
ルールがない。
だから組織が壊れていくのです。
■ GHOST経営™が目指す構造依存経営
GHOST経営™では、社長依存から構造依存への移行を目指しています。なぜなら人は変わるからです。気分も変わる。体調も変わる。考え方も変わる。だから人に依存すると不安定になります。
一方で構造は違います。ルール、利益基準、評価制度、教育制度、業務フロー、経営計画。これらは会社の経営OSになります。つまり誰がやっても同じ結果を出せる仕組みです。
赤字会社は人に依存しています。黒字会社は構造に依存しています。ここが大きな違いなのです。
利益とは根性で生まれるものではありません。利益構造から生まれるのです。
■ 長期繁栄する会社はシンプルである
優秀な会社を見ていると共通点があります。シンプルです。
方針が明確で、やることが決まっています。やらないことも決まっています。だから迷いません。だからスピードが速い。だから利益率が高い。だから人が育つ。だから長期繁栄する。
反対に赤字会社は複雑です。商品が多すぎる。顧客層が広すぎる。ルールが曖昧。責任が不明確。結果として全てが中途半端になります。
つまり赤字会社は努力不足なのではありません。方向性不足なのです。
■ 経営の本質とは選択である
経営とは何でしょうか?
売上を作ることでしょうか。社員を増やすことでしょうか。
もちろんそれも重要です。
しかし本質はもっとシンプルです。
経営とは選択です。何をやるか。何をやらないか。誰を顧客にするか。誰を顧客にしないか。どこへ向かうか。どこへ向かわないか。
その選択の連続が会社を作ります。だから無方針は危険なのです。なぜなら選択基準がないからです。そして放任は、誰も正しい方向が分からないから危険なのです。
優れた経営者は未来を示します。方針を示します。基準を示します。そして組織を導きます。つまり経営の本質とは管理ではありません。
「選択と集中なのです。」
赤字会社の共通点は無方針と放任である。逆に言えば、繁栄する会社の共通点は明確な方針と一貫した実行なのである。
そしてその方針こそが、利益を生み、人を育て、企業価値を高め、長期繁栄を実現する経営OSの土台になるのである。
