~なぜ優れた会社ほど「目標の力」を知っているのか~
■ 人間は、未来によって動く生き物である
私はこれまで、半導体業界、建設業界、設備業界、製造業、コンサルティング業界など、さまざまな現場を見てきました。日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを含む14カ国以上で仕事をしてきた中で、一つだけ確信していることがあります。
それは、人間という生き物は、未来が見えた瞬間に驚くほどの力を発揮するということです。
逆に言えば、どれほど優秀な人材が集まっていても、未来が見えていなければ力は発揮されません。これは不思議なことです。
動物は目の前の餌を求めて行動します。しかし人間は違います。まだ存在しない未来のために努力できるのです。
例えば受験生です。高校生が毎日何時間も勉強するのは、今が楽しいからではありません。その先にある大学生活や将来の夢が見えているからです。
オリンピック選手も同じです。何年も厳しい練習を続けられるのは、表彰台に立つ未来が見えているからです。
経営もまったく同じです。社員が努力するのは給料のためだけではありません。自分たちが向かう未来に価値を感じた時、人は初めて本気になるのです。
だから私は、経営とは未来を創る仕事だと思っています。そして、その未来を最初に描かなければならないのが社長なのです。
■ 「やらされる組織」と「自ら動く組織」の違い
ある会社のコンサルティングをしていた時のことです。
社員数は30名ほど。業績は悪くありません。しかし社長は悩んでいました。
「社員が自分から動かないんです。」
話を聞くと、社員は指示されたことはやる。しかし、それ以上はやらない。改善提案もない。挑戦もない。責任も取りたがらない。
私は社長に質問しました。
「社員は会社が5年後どうなっているか知っていますか?」
社長は少し考えてこう言いました。
「いや、多分知らないと思います。」
原因はそこでした。
社員は仕事をしていたのではありません。作業をしていただけだったのです。
つまり、目的地が見えていない。どこへ向かうのか分からない船で、一生懸命オールを漕げと言われているようなものです。
人間は不思議な生き物です。意味のない努力は嫌います。しかし意味があると理解した瞬間、驚くほど頑張れるのです。だから組織を動かす最大の原動力は命令ではありません。未来なのです。
■ 社長の決意が、社員の覚悟になる
多くの社長は、「社員のやる気を上げたい」と言います。しかし私は、その前に確認したいことがあります。
社長自身は、本気で未来を信じているのか。
ここが極めて重要なのです。なぜなら社員は社長の言葉ではなく、社長の覚悟を見ているからです。例えば私がアメリカで大型プロジェクトを担当していた時のことです。納期は絶望的。トラブルも続発。周囲は「無理だ」と言っていました。しかしプロジェクトリーダーだけは違いました。毎日のように未来を語るのです。
「必ず成功する。」
「世界最高の工場になる。」
「この経験は全員の財産になる。」
最初は誰も信じていませんでした。
しかし不思議なことに、その言葉が繰り返されるうちに、少しずつ空気が変わり始めたのです。
人が変わり始めた。
会議が変わった。
行動が変わった。
そして本当にプロジェクトは成功しました。後から振り返って気づいたのです。
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人は理屈ではなく、信念に動かされるのだと。
経営も同じです。
社長の決意が弱ければ、社員の覚悟も生まれません。社長の未来像が曖昧なら、社員の行動も曖昧になります。つまり社員を動機づけている最大の要因は、社長自身の決意なのです。
■ 目標とは数字ではなく、未来への道標である
ここで誤解してほしくないことがあります。目標というと、多くの人は売上目標を思い浮かべます。
年商10億。
利益率15%。
顧客数1000社。
もちろん重要です。
しかし本質はそこではありません。目標とは数字ではなく、未来への道標なのです。
例えば登山でも同じです。山頂がどこにあるのか分からなければ登れません。途中にある目印があるから進めるのです。
経営も同じです。
目標があるから人は前進できます。
目標があるから改善できます。
目標があるから工夫できます。
目標があるから成長できます。
つまり目標とは、人間の持つ「未来へ進みたい」という本能を活性化する装置なのです。だから優秀な会社ほど目標設定が上手です。しかも単なる数字ではありません。その数字の先にある未来まで語ります。
売上10億ではなく、
「地域で最も信頼される会社になる。」
利益率20%ではなく、
「社員が安心して未来を描ける会社をつくる。」
その未来があるから数字に意味が生まれるのです。
■ 全員経営が生まれる瞬間
GHOST経営™では、「全員経営」という考え方を大切にしています。しかし全員経営とは、全員が経営者になることではありません。全員が未来に参加することです。
多くの会社では経営が社長だけの仕事になっています。社員は与えられた仕事をするだけ。
数字も見ない。
利益も知らない。
目的も分からない。
これでは会社は強くなりません。
本当に強い組織とは、社員一人ひとりが未来を理解している組織です。
なぜこの仕事をするのか。
なぜこの品質が必要なのか。
なぜこの利益が必要なのか。
それが理解できた瞬間、人は当事者になります。
当事者になった人間は強い。
言われなくても考える。
言われなくても改善する。
言われなくても行動する。
ここに全員経営が生まれるのです。
私はこれを何度も見てきました。
未来像を共有しただけで、会議が変わる。
社員の発言が変わる。
数字が変わる。
業績が変わる。
つまり組織は、人によって動くのではありません。共通の未来によって動くのです。
■ GHOST経営™が目指す未来
GHOST経営™では、社長依存型経営から構造依存型経営への移行を目指しています。しかし、それは単に仕組みを作ることではありません。未来を実現するための経営OSを構築することです。
未来像がある。
目標がある。
利益構造がある。
教育がある。
評価制度がある。
権限移譲がある。
つまり全てが一本の線で繋がっている状態です。
未来像がない会社は場当たり的になります。未来像がある会社は一貫性を持ちます。そして一貫性こそが再現性を生みます。
再現性があるから利益が積み上がる。
利益が積み上がるから人が育つ。
人が育つから会社が繁栄する。
つまり未来像は、会社全体の構造を作る起点なのです。
■ 経営の本質とは、人に希望を与えることである
経営とは何でしょうか。
利益を上げることでしょうか。
会社を大きくすることでしょうか。
もちろんそれも重要です。
しかし私は、それだけではないと思っています。経営の本質とは、人に希望を与えることです。
社員に希望を与える。
お客様に希望を与える。
取引先に希望を与える。
地域社会に希望を与える。
そして、その希望の源泉になるのが未来像なのです。
人間という生き物は不思議です。未来が見えると頑張れる。目標があると努力できる。仲間と未来を共有すると奇跡のような力を発揮する。だから優れた会社には必ず未来があります。
優れた経営者には必ずビジョンがあります。そして、そのビジョンが人を動かし、組織を変え、会社を繁栄へ導いていくのです。
つまり経営の本質とは、未来を描くことではありません。描いた未来を通じて、人の可能性を解放することなのです。
