Column Vol. 24 発展途中で必ず訪れる経営者の○○が試される課題とは

 

創業から会社がある程度の形をなし、仕組が回り始め、社員も増え始めた時、必ず訪れる経営者への課題がある。

 

E社もその典型であった。

 

会社環境を良くしようと、色々と試してみたが、一向に良くなるどころか離職者が出始めた。

業績は上がっているが、現場を回す人員が足りない。そうのこうの言っているうちにとうとう現場に穴が開いたのである。

 

社長は仕事を依頼した会社へ出向いては謝り、それが何社も続き、それでも収まり切れず仕事の依頼を断り始めた。

 

「社員のために」

 

そう思い、会社環境を「より良く」している時にだ。

 

独りよがりの危険性

経営者には日々色々な苦悩が押し寄せてくる中で、社員も増え業績も上昇傾向にある中で、「ここまで頑張った社員に何かしたい」という想いが募ってくるものである。色々と考え辿り着いたものは、どんなものなのか、をもう一度考えて頂きたい。

 

何を考えるのかと言うと、「それを社員が本当に望んでいるのか?」ということである。これを考える時に必ずと言っていいほど基本的なことがある。それは「社員の立場に立って考えること」であり、その視点が抜けてしまうと経営者の思い込みだけとなり、それは経営者の独りよがりとなるのである。

経営者の言うことは、社員からしてみれば絶対だから、それなりの間柄でなければ「社長そんなの意味ないですよ。それよりも○○してもらった方が嬉しいです。」と言うことは出来ない。果たしてそう言ってくれる社員はいるのか?というところだが、E社の場合は皆無だったようだ。

 

想像できないものは、形にすら出来ない

想像とはイマジネーションのことであり、それは小さな子供が白いキャンバスにイメージしたことを絵にするのと同じプロセスである。

 

社員の立場から考えて何が必要なのか?それが想像することである。何かを始める時、想像することが出来なければ形にすら出来ないのである。「こういうものが欲しい」「こういうものを作りたい」など、先ずは想像することから始まる。想像することで、それをどれだけ実現させたいか、の想いの熱量がその時に必要となってくるのだが、これをパッションと言う。このパッションのもとは必ずと言っていいほど何らかの形で感情が大きく動いた経緯があるはずで、それを忘れてしまうと原点である「感情が揺さぶられて出てきた想い」から乖離してしまうのである。

 

そこに社員がいるのであれば、その想いに対し、「自分が社員だったら、本当にそれを望むのか?」と一度思考を巡らせる必要があるのである。

 

答えは至ってシンプルである

想像出来ることで、形にすることが出来る。しかし、想像できないことは形には出来ないのであるが、その想像することだけでは不十分なのである。想像し連想することこそ必要であり、それは色々な所にも応用できるようになるからである。

 

職長教育(RST)の講師をやっている時に述べ300人以上の職長を世に送り出したが、どんな現場であろうと想像力が必須となる。特に安全に関わる部分が一番致命的で、人命や社員の人生に直結する部分が多いからである。

 

例えば簡単な質問としてこんなことを聞く場合がある。

列車の食堂車でお客様がテーブルで食事をされていた時に胡椒をかけようと胡椒の入っているビンを振ったところ、胡椒のビンの蓋が開いてしまい料理が胡椒まみれになってしまった。お客様はウエイトレスを呼び、そのことを告げ、ウエイトレスは新しい料理をお客様に提供し、違う胡椒のビンを振っても蓋が外れないか確認し、お客様に提供した。

 

この後、このウエイトレスが取った行動とは?

 

こんな具合だが、さて読者の皆さんはどう答えるであろうか。想像と連想をしながら是非自分なりの回答を出して頂きたい。

 

部分だけの想像では、会社はツギハギだらけになる

創業から軌道に乗せた社長は凄い。その一点に尽きる。

しかし暫くして、業績も社員も増え拡大傾向にある時に重要なことがある。それは何かというと、大きなカラムの中に小さなカラムを描くことと、会社が進む未来を予め決めることである。

 

先程「想像できないことは形にならない」と述べたが、それがここでは大きく関わってくる。

周りでも創業しました、と言われる方がある一定数いるが「会社のブループリント(青写真)と設計図は先に想像し作っておいた方がよい。」とお知らせするのである。

 

思い付きで「導入した~制度」などは、危険極まりない失態になりうるのである。下手すれば社員はうんざりし、それを社長が知って改善しようと手を加えるが、よく思考し社員の立場に立って熟考されていない制度など全く意味がないのである。

 

また一番危険なのは「社員への報酬を増加させる」行動にでる経営者がいるが、全く持って人間の特性を理解していない証拠でもある。「何故社員への報酬を増加させるのか?」「他に方法はないか?」など、しっかりと考え想像し、「会社として成長する延長線で望むものは社員の○○と○○を実現することである」とハッキリしたイメージでそれを実現するためにはどうしたらいいのか?の手段の一つが「報酬を上げ、○○と一緒にそれを実現することで社員の実行力が高まる」であればいいのだが、明確な理由と根拠がないまま「社員の報酬を上げる」など具の骨頂とでもいうべき行動であり、最悪の場合取り返しのつかないことになり兼ねないのである。

 

それは実際に心理学の実証試験でも確認されている。「自発的に物事を決定したり行動に移したりする内発的な動機づけが出来れば、継続することが出来る。その一方で、他者から行動を決定されるような外発的動機づけの場合やる気が失せる」と言うもので、このやる気が失せた状態を専門用語で「アンダーマインイング」と言う。

 

これはどういうことかと言うと、例えば先ほどの報酬を上げる話でいくと、「仕事が楽しい」と感じて仕事をすることは「目的」となり内発的動機づけであるが、「報酬を上げる」とストレートに打ち出した途端に、「報酬を受け取ることが目的」にすり替わり、仕事は「手段」へと変わり外部的動機づけとなり、アンダーマインイング効果が現れ「今まで楽しかった仕事が、高額な報酬を受け取ることが目的にすり替わったり、継続することが出来なくなる」と言うことでもある。

 

その効果は、若年者であるほど影響が大きい。よく、「~したらお駄賃あげるから~」と子供の行動を促すことがあるが、この実験からは、「最初は言うことを聞くが、その内いくら払っても動かなくなったり、高価な対価を求める」と言う経験をした人も多いのではないだろうか。

 

本当に社員が働きやすい会社を作るには

実際にご自身に置き換えて考えてみてもらいたいのが、30年、40年、50年と人生を経験している方であれば、人生を振り返った時、ご自身がどんな時にバリバリと仕事をし、どんな思いだったのか、どんな時に楽しかったのか、どんな時に落ち込んだり、やる気をなくしたのか、幸せや充実感を一番味わえたのはどんな時で何だったのかなど、その要因を回想してもらいたい。決して報酬ではなかったはずである。

 

それらを組み合わせて、どのような会社の体制にしていくのか、本当に社員が望むことは何なのか、そこにどんな制度を付加して、“仕事が楽しすぎて辞められない!”と言わせられるのか。それが出来てこそ“潜勢力”となり、“実効力”と“実行力”が付き、“勢い”となるのであるが、想像と連想で詳細がイメージ出来ない限り、そのブループリント(青写真)が出来上がることはない。それを作れるように指導するのが弊社の強みで、100年続く企業を創造する意義でもあり、経営者の想いを形に変え全社にDNAとして残していくために、人生の経験全てを総動員して全身全霊をかけた本気のコンサルティングである。

 

あなたはいつ、本気で社長業に取り組む決断をするのか。本気に社員の事を考え行動に移すか。思いついた時なのか、危機迫ってからなのか。労力、費用、リスクヘッジ…そんなことは中学生でも分かる話である。