成長している会社ほど、「依存」を恐れています
私は半導体メーカーに在籍していた頃、国内外のさまざまなお客様と仕事をする機会に恵まれました。世界を代表する企業との取引も経験し、大きな案件を受注したときの喜びも、何度も味わいました。しかし、その現場で私が学んだ最も大きな教訓は、「大きな得意先ほど安心してはいけない」ということでした。
売上が伸びると、人は安心します。
会社も同じです。
「このお客様がいるから大丈夫。」
「長年の付き合いだから心配ない。」
「毎年安定して注文をいただいている。」
そう思い始めた瞬間から、実は会社のリスクは静かに大きくなっています。
半導体業界は景気の波が激しい業界です。昨日まで生産が追いつかないほど注文が入っていた企業が、半年後には設備投資を止め、生産調整に入ることも珍しくありません。世界経済や為替、技術革新、地政学リスクなど、経営者にはどうすることもできない要因で、市場は一瞬にして変わります。
私自身、そのような現場を何度も見てきました。だからこそ、大きな取引先を獲得すること以上に、「一社へ依存しない経営」が重要であることを肌で感じてきたのです。その考え方は、経営コンサルタントになった今でもまったく変わりません。むしろ、数多くの中小企業を支援してきたからこそ、その重要性をさらに強く感じています。
業績が悪化した会社を分析すると、共通する特徴があります。それは、売上が減ったことではありません。「売上を一社に依存していた」という構造そのものが問題だったのです。
売上を追う前に、会社を守る仕組みを考える
経営者は売上を伸ばすことに意識が向きがちです。もちろん、それは間違いではありません。しかし、私はそれ以上に大切なことがあると考えています。それは、「会社を守る構造をつくること」です。
例えば、一社で売上の50%を占めていた会社があるとします。その得意先が業績悪化で発注を半分に減らしたら、会社全体の売上は一気に25%も減少します。売上が25%減るだけなら何とかなると思われるかもしれません。しかし実際には、固定費はほとんど変わりません。人件費も家賃も設備費も支払い続けなければなりません。すると利益は一気に赤字へ転落します。
私は、このような会社を数多く見てきました。社長は口をそろえて言います。
「こんなことになるとは思わなかった。」
しかし、本当に予測できなかったのでしょうか。私はそうは思いません。
・市場は必ず変化します。
・お客様の経営方針も変わります。
・担当者も交代します。
・競合も現れます。
だからこそ、「変わること」を前提に会社を設計しなければならないのです。
経営とは、未来を予測することではありません。未来が変わっても耐えられる会社をつくることです。そのためには、主力のお客様を複数持つことが重要です。できれば異なる業界のお客様を持つことです。自動車業界が落ち込んでも、医療業界が支えてくれる。建設業界が低迷しても、食品業界が伸びる。
このように市場の変化を分散できる会社ほど、長く繁栄しています。売上は大きくても、一社依存の会社は強い会社ではありません。数字は大きくても、経営の土台は非常に脆いのです。
私はこれまで84社の経営改善に携わってきましたが、本当に強い会社には共通点があります。それは、「売上を増やすこと」よりも、「会社が倒れない構造をつくること」を優先していることです。
利益は結果です。しかし、安全性は設計できます。だから私は、経営者に「売上を追いかける前に、会社を守る構造を設計してください」とお伝えしています。
依存しているのは得意先ではなく、利益構造です
以前クライアントである製造業の社長からこんな言葉を聞きました。
「うちは○○社との取引があるから大丈夫です。」
その会社の名前を聞けば、誰もが知る大企業であることも少なくありません。
確かに、大手企業との取引は会社の信用にもつながりますし、経営者として誇りに感じることでもあります。しかし、私はその話を聞くたびに、「本当に安心できる状態なのだろうか」と考えます。
なぜなら、依存しているのは得意先ではなく、会社の利益構造だからです。得意先が変わったのではありません。市場が変わったわけでもありません。問題は、一社の判断だけで会社全体の利益が大きく左右される構造になっていることです。つまり、リスクは外部ではなく、自社の中にあります。
経営者は売上を管理するだけでは十分ではありません。売上の構成比率、業界のバランス、利益率、固定費との関係まで含めて設計しなければ、本当に強い会社にはなれません。
私はこれまで、数多くの企業の利益改善をご支援してきました。その中で分かったことがあります。
「業績が安定している会社は、偶然利益が出ている」
のではありません。利益が出る構造を、意図的に設計しているのです。それは商品だけではありません。販売先も、利益率も、人材も、組織も、すべてが一つの構造となり、仕組みとしてつながっています。だから、一つの歯車が止まっても、会社全体が止まることはありません。
これこそが、私が考える「強い会社」の条件です。
GHOST経営™は「依存しない会社」をつくる経営です
私はGHOST経営™で、「社長依存から構造依存へ」という考え方をお伝えしています。しかし、この考え方は社長だけに当てはまるものではありません。得意先にも、人材にも、商品にも、会社は何か一つに依存してはいけないのです。
・一人の営業マンしか売れない会社。
・一人の職人しかつくれない会社。
・一つの商品しか利益を生まない会社。
・一社のお客様しか会社を支えられない会社。
どれも、一見すると順調に見えるかもしれません。しかし、その中心にある人や会社が動かなくなった瞬間、経営は一気に不安定になります。
だからこそGHOST経営™では、「属人性をなくす」ことを目的にしているのではありません。
一人ひとりの強みを生かしながら、その強みを会社全体の力へ変えていくことを目的としています。営業力も、技術力も、経営力も、個人の能力で終わらせるのではなく、組織の資産として残していく。その結果として、誰か一人が抜けても利益を生み続けられる会社になります。
これが、私がお伝えしている「経営OS」の考え方です。
経営OSとは、会社を動かすための共通ルールであり、利益を生み続けるための設計図です。会社は、勢いだけでは続きません。構造があり、その中に仕組みがあるから続くのです。
未来の危機は、今日の構造で防ぐ
経営者の仕事は、今日の売上をつくることだけではありません。一年後、五年後、十年後も会社が存続できる状態をつくることです。危機が起きてから動くのでは遅すぎます。
経営者は、危機が起きる前に手を打つ人でなければなりません。得意先の分散も、その一つです。利益構造の見直しや人材育成や事業の構造化と仕組み化も、リスクヘッジそのものです。なぜなら未来は予測できません。しかし、未来に備えることはできます。
だから私は、「今、利益が出ているから安心」という考え方をおすすめしません。本当に見るべきなのは、「利益が出なくなったときでも会社は耐えられるか」という視点です。その問いに自信を持って「はい」と答えられる会社こそ、本当に強い会社なのです。
経営の本質
会社を危険にさらすのは、売上が少ないことではありません。一つの得意先、一人の社員、一つの商品、一人の社長に依存してしまう経営です。
経営者が本当に守るべきものは、今月の売上ではありません。会社が十年後も利益を生み続けられる「構造」です。
私は半導体業界で、世界市場が一瞬で変化する現実を見てきました。コンサルタントとして独立してからも多くの企業が「変化に対応できなかった」のではなく、「変化に耐えられる構造を持っていなかった」ことで苦しむ姿も見てきました。
だからこそ、私はGHOST経営™を通じてお伝えしています。
会社は、社長の頑張りで守るものではありません。会社は、構造で守るものです。得意先を分散することも、利益構造を設計することも、属人性をなくすことも、すべては会社を未来へ残すための経営判断です。
会社の未来は、売上の大きさでは決まりません。どれだけ「依存しない構造」を持っているかで決まるのです。
それこそが、私がGHOST経営™を通じてお伝えしたい、経営の本質なのです。
