Column Vol. 10 初公開!年商1000億越え企業の人財育成の基礎 (2)

会社の成長には、必ずと言っていいほどスタッフの雇用が伴い、会社を共に発展させる大切な人財が不可欠となります。

 

今までにご相談に来られた方々のケースを分析していくと、そこにはある共通点があります。

 

・明確な会社プロファイルや業務の説明がない

・入社オリエンテーションがない

・キャリアアップの制度がない

・昇給の制度がないまたは不明確

・評価基準がない

・教育制度がない

・感覚的な指示が多く、明確な説明がない

・シゴトの基準がない

・褒めるより、怒られることの方が多い

・社長自ら現場で忙しくしている

・重要な伝達も全て口頭、あとで言った言わないとなることが多い

 

などが上がってきますが、重要なガイドラインは社長の頭の中にあることになります。

 

一方、年商1000億企業では、上記に挙げた内容が全て揃っているもので、全てに於いて明確なガイドラインが設けられており、また多様な制度を構築しております。これらは、オリエンテーション時に説明され、その後必要な時にイントラネットや規定集などで確認することが出来るものとなっております。

 

成長時期に立ちはだかる2つの大きな壁

そのような会社でも、創業から成長段階にかけて沢山の難題に遭遇し、それらを解決して大きくなっています。その壁が大きく分けて2つあります。

 

・業務に関わる仕組化のジレンマ

・社員の増加、成長に伴う人事面でのジレンマ

 

業務に関わる仕組化のジレンマ

分業し仕組化するにはそれなりのボリュームが必要となりますが、ボリュームが小さいうちからコツコツと規定や制度、手順書やマニュアル、評価基準や品質基準を整備していく必要があります。

 

例えていうならば、パズルを完成させるための「絵」であり、その「絵」を見ながら何百、何千ものピースを組み合わせていく必要があります。その「絵」は、仕組の数だけあるものです。

 

しかしパズルをするだけではシゴトにはならなく、そこに時間の制限や予算、それに伴うマンパワーなど資源を投入し「完成の定義」を作らなければなりません。

 

このパズルも初めてのものではは「絵」がない状態で始まりますが、それなりのヒントとなるものを探す為にリサーチをし、イメージに近いものを調査・分析、「仮の絵」を作っていくことになります。これが「たたき台」とも言われます。

 

このたたき台と呼ばれる「仮の絵」をより完成形のイメージに近づけるために、PDCAのサイクルを回しながら完成形を目指していくのです。これをプロジェクトとも言います。

 

また、仕組を作った際には、同時に手順書も作成し、その手順書に沿って関係者以外の人に作業してもらい、PDCAでさらに完成度を高めていきます。マニュアル(取り扱い説明)等も同じ考え方です。

 

プロジェクトで不可欠なものは、チームメンバー全員の意見です。多角度からの目線や考え、気づきを入れることで、普段一人では見落としがちな部分や固定概念で見えない部分が見えるようにし、“より良いもの“というゴールに進むためには欠かせないものです。その時のルールは「否定的な意見は言わない」、「全員の発言を尊重する」など、最低限のルールは必要になります。

このように、会社の成長は社員の成長の場があり、「一緒に考え行動する」ことが必要不可欠となります。このような職場は、成長の速度が速く、優秀な人財も集まる傾向があります。

 

逆に、今までにセツメイカイを一度でもしたことがある場合、この指示と叱責は続けられる傾向にあります。社員は一度でもセツメイカイをされると、委縮し二度と自分の想いは語らない、隠ぺい体質へと変わっていくことになります。

 

「何遍言っても指示したことが出来ない」や「いい加減、心を入れ替えてやってもらいたい」と思ったことがある方も多いと思います。しかし試行錯誤を繰り返す中で分かったのは、出来ないには「それなりの理由」があり、心を入れ替えろと言われても「腑に落ちないから入れ替えようがない」と言うのが現状であり、その殆どは

・伝える側が相手の立場に立って話してない

・言語化がしっかりと出来てない

・最低限必要なルールがない

・指示と理由が明確に伝えられてない

・「自分が出来るんだから、相手もできるもの」として考えている

・指示する人が短気である

・自分の中の「常識」がベースにあり、相手の「常識」は無視されている

・「常識」という妄想を基準に考えている

(そもそも「常識」は「非常識」であり、人それぞれが育った環境で変わるので、明確な万人の「常識」の線引きは出来ない。)

などが挙げられ、それらが全て相手に対してベクトルが向いていることになり、相手を無理やり変えようとしているのが原因ですが、短い時間で相手を変えることは出来ないのが常です。誰がやっても同じように出来る仕組とノウハウを落とした手順書、品質基準、最低限必要なルールとその意味をしっかりと説明、教育、訓練することでその殆どは解決します。

 

仕組化の大基本は、誰かの記憶や裁量に頼らず、記録に残し誰でも同じクオリティーで出来ること、です。

 

社員の増加、成長に伴う人事面でのジレンマ

成長速度が速い会社では、その成長に合わせて人事面での詳細を急ぎ足で決めていかなければなりません。その内容は多岐に渡り、各種のキャリアパス、給・賞与、昇格などの制度、評価、教育、規定…と多大な時間と労力がかかります。そのため、初期の段階である程度決めているところが多く、魅力的な人財が集まる仕掛けや仕組がそこにあるのです。

 

会社の成長を支える社員の育成と将来の展望が望める制度や規定など、最低限必要不可欠なのはそのためです。

 

一方、成長速度が緩やかな会社では、日々の業務が忙しい時が多いが、業績が思ったように改善しない、という現象が起きてきます。人手を増やしたい、と思うのもこの時期だと思いますが、仕組や制度、基準などの整備を始めリクルート活動に関わる整備が出来ていないと必要とする人財を得ることは出来ず、妥協して人材を選ぶことになります

 

このように、傾向が見えると対策を打つことが出来ますが、数ある「TO DO」の緊急度vs重要性や効果率vs難易度で進める中で、出来る所から作ることをお勧めします。

 

ここで重要なのは、先ずは完成させること。そして、テストしその結果を見て改善していく事です。

 

 

 

前職を退職した時、会社から一通のレターを受け取りました。そこには

「長年の間会社の発展に寄与して頂き心より感謝いたします。」

と書かれていました。退職した今でも以前の「素晴らしい会社で働くことが出来てよかった」と胸を張って言うことが出来ます。

 

「責任という」大きなジャケットを渡され、そのジャケットに合うよう成長の機会があり、失敗しても責任の追求や怒られる代りに「どのように解決し、新たな結果へとつなげるか?」を考え抜き諦めないことが社風となっている、そんな意気な会社でした。関わった全ての人たちに感謝の一念のみが今でも残るものです。

 

その会社も元々は小さなベンチャーから始まっています。日本の中小企業と呼ばれる多くの会社が世界を牽引出来る会社へと発展し、社員から「この会社で働けて良かった」と思える会社を築き、末永く継続できるよう、何かのヒントを学んで頂けることを切に願っております。